IPO

【トランザクション・メディア・ネットワーク】新規上場企業データ分析

東京証券取引所(東証)または地方証券取引所へ新規上場予定の企業について、独自の視点でデータ分析しています。

企業概要

会社名

株式会社トランザクション・メディア・ネットワークス

創立年

2008年3月

本社所在地

〒103-0027 東京都中央区日本橋2-11-2 太陽生命日本橋ビル18階

事業内容

  • 電子決済サービスの開発及び提供
  • 情報プロセシングサービスの開発及び提供

 

事業説明

トランザクション・メディア・ネットワーク社は、クラウド(シンクライアント)型電子決済を国内で初めて商用化した企業です。

決済サービスをクラウド化したことで、それまで店舗に複数台設置されていた決済ブランド毎の決済端末を1台に集約することが可能となった他、複雑な複数層のネットワークの簡素化による障害箇所の低減や、決済情報をデータベース化の上、一元管理することによる保守性の大幅改善等を実現しました。また、従来のリッチ型決済端末の処理方法(決済認証等の機能を全て端末側で処理する決済方式)に比べ、「安価な端末導入コスト」、決済手段追加時の「優れた拡張性」、「運用の簡素化」等の競争優位性を有しています。

主に流通業の事業者を顧客とし、複数のキャッシュレス決済事業者と加盟店を繋ぎ、あらゆるキャッシュレス決済サービスをワンストップで提供するゲートウェイサービス(複数の異なるネットワークを接続し処理を行うシステムサービス)と、それに伴う決済端末の販売、関連する開発などを提供しています。

現在は加盟店に対して電子マネー、クレジット、QR、バーコード、ハウスプリペイド、共通ポイントといった幅広い43の決済サービスをワンストップで提供できる企業として事業を拡張し、1台の決済端末で複数の決済手段に対応したい小売店舗のニーズと、多くの小売店舗と繋がりたい決済ブランド事業者のニーズに対応するゲートウェイとして、1,000 社を超える加盟店に導入されています。2023年1月末現在で接続されている決済端末台数は80万台、年間で3.1兆円超、17億件(2022年3月期実績)の決済処理を行うまでに規模拡大を続けています。

 

財務状況

売上高、利益などの業績推移を目論見書からアップロードしました。

会社業績(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 売上 営利 経常 純利 EPS ROE ROA 営利率 原価率 販管費率
Mar-18 40.7億 7.55億 7.28億 23.12 10.16
Mar-19 49.8億 2.95億 2.2億 6.99 3.04
Mar-20 81.7億 16.5億 11.1億 35.26 11.91
Mar-21 64.5億 155百万 1.59億 0.99億 3.13 1.35 1.02 2.4 70.3 27.3
Mar-22 71.4億 711百万 7.12億 -3.86億 -12 赤字 赤字 9.96 68.06 21.98

 

財務状況(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 総資産 純資産 株主資本 自己資本比率 利益剰余金 有利子負債 有利子負債比率 BPS
Mar-18 71.7億 58.7億 81.9
Mar-19 72.5億 60.9億 84.1
Mar-20 93.2億 72億 77.3
Mar-21 96.4億 73.1億 73億 75.7 12億 10億 13.7 231.86
Mar-22 104億 57.7億 57.6億 55.5 -13.5億 5億 8.68 179.2

 

IPO情報

新規上場(IPO)に向けて、幾つかの重要な情報をまとめました。

基本情報

業種:情報通信業

銘柄コード:5258

上場区分:東証グロース

 

IPO日程

ご利用の証券会社によって、多少のズレが生じますので、ご注意ください。

IPO主要日程 横スクロールできます

ブックビルディング期間 2023年3月16日〜3月23日
ブックビルディング抽選日 2023年3月24日
購入申込期間 2023年3月27日〜3月29日
上場日 2023年4月4日

 

IPO情報

IPOに関する公募総数や公募価格(予定)をまとめます。

IPO情報 横スクロールできます

公募株式総数 11,351,200株
売出株式比率 47.4%
O.A分 1,702,600株
想定価格 880円
仮条件価格 880円(100%)〜930円(106%)
公募価格 930円(予定)
吸収金額 121.40億円(予定)
ロックアップ 90日間
主幹事 野村證券

 

今後の展望や懸念事項

2018年4月の経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」において、2025年にキャッシュレス決済比率40%の実現を目指す(将来的には世界最高水準の80%を目指す)ことがうたわれ、「国策」としてキャッシュレス決済が推進されております。 「国策」を後押しするかたちで一般社団法人キャッシュレス推進協議会(当社も正会員として参画)が設置され、改正割賦販売法・軽減税率のポイントバック等の政策的な追い風も吹き、キャッシュレス決済の市場規模は拡大傾向にあります。

その状況下において、トランザクション・メディア・ネットワーク社は以下の5つを収益源としており、今後の更なる成長も期待できます。

  1. 自社が製造・販売する非接触リーダー・ライター等の「決済端末販売売上」
  2. 加盟店 へのデータ還元や決済ブランド追加等のシステムカスタマイズによる「開発売上」
  3. 主に加盟店等から得られる月額固定の決済処理利用料である「センター利用料」
  4. 利用する決済ブランド毎の課金及び台数から設定する「登録設定料」
  5. 加盟店への入金精算の手数料である「QR・バーコード精算料」

 

独自評価及びスコア

これまでの投資経験を活かしたデータ分析で、独自評価及びスコアを付けています。

独自評価スコア:D9

※独自評価スコアはD4(低評価)〜S20(高評価)まで存在します。

独自の評価指標

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は、トータル591社でした。

それらの企業データから、以下の9の項目について、ホームページや目論見書(IPO時に発行される報告書)を調査して、上場前に初値上昇率や損失リスク度を分析しています。

  1. 業種(最近、情報通信業の初値上昇率は比較的高い傾向)
  2. 業績(売上高や利益率が健全に成長しているか)
  3. 上場市場(現在、東証プライムに上場する大型株は、初値が上昇しづらい傾向)
  4. 主幹事(IPOを管理する証券会社で多少の影響がある)
  5. 公開株数(少ない方がプラチナチケットになり易いが、当選しづらくなる)
  6. 売り出株式比率(新規発行分と既存分の比率で、低い方が上がり易い)
  7. ロックアップ(大株主が上場日から一定期間、売却できない期間のことで、長めの設定が良い)
  8. 株単価(安い方が、初値上昇率は高くなる傾向)
  9. 同日上場企業数(同日に複数社がIPOする場合は資産が分散して上がりづらい傾向)

これらの9項目の分析結果から、初値上昇があまり期待できそうにない企業については、予めBB申込を辞退して、マイナス=損失リスクを軽減しています。

初値上昇率の予想

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は591社で、評価スコア「D9」の企業は51社ありました。

それら企業における初値上昇率(=初値/公募価格)は以下の通りです。

過去データを基に算出した初値上昇率 横スクロールできます

平均値 127%(1.27倍)
最大値 214%(2.14倍)
最小値 75%(公募割れ)
中央値 118%(1.18倍)

公募割れした企業は12社あり、約24%の企業が初値で公募価格を下回ったことになります。

平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値=平均値に対して、中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。平均値の場合は他の値と比べて極端に大きい(または小さい)値があることによって、影響を受けてしまいますが、中央値の場合は、真ん中の値ですので、そのような影響は受けづらいのが特徴です

 

管理人のBBスタンス

過去のデータを分析した独自評価スコアに応じて、管理人のブックビルディング(BB)のスタンスを決めています。

トランザクション・メディア・ネットワーク社の初値は公募割れ(初値が公募価格を下回ること)のリスクがありますが、業種や事業内容は今後の成長が期待できることから「一部の所有口座からBB申込予定」です。

吸収金額が100億円を超える大型なIPOなので、初値上昇に対しては重い状況ですが、同日に上場する企業もなく、米国経済や日経平均株価の地合いが良ければプラスが期待できると推測しています。

最後に

不安定な世界情勢や世界各国の利上げ、さらには米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの破綻など、株式にとってはマイナス要因が多い状況なので、日本国内のIPO新規上場企業への株式投資に対しても、今まで以上に慎重に検討する必要が出てきています。

今回の記事が、あなたの投資判断に有益になれば幸いです。

最後に、あくまで営利を伴わない個人的な自己分析なので、最終的な投資判断は自己責任でお願い致します。