IPO

【クオルテック】新規上場企業データ分析 公募割れリスクは38%

株式会社クオルテックは、技術者としての情熱と客観的なデータ の蓄積を大切にし、製品の安全・環境・快適性の向上に取組み、信頼性評価事業、微細加工事業及びその他事業の3つの事業を運営している企業です。

東京証券取引所(東証)または地方証券取引所へ新規上場予定の企業について、独自の視点でデータ分析しています。

企業概要

会社名

株式会社クオルテック

創立年

1993年1月18日

本社所在地

〒590-0906 大阪府堺市堺区三宝町4丁230番地

事業内容

  • 電子部品の不良解析・信頼性試験の受託および新技術の開発
  • 品質管理を中心とした工場経営、実装技術に関するコンサルタント
  • レーザ加工・表面処理(めっき)技術を中心とした微細加工
  • 試験装置の設計・開発・製造・販売

 

事業説明

株式会社クオルテックの主な事業は、信頼性評価事業、微細加工事業及びその他事業の3つの柱で構成されています。

信頼性評価事業

電子部品等に対する環境試験、電気試験、振動試験等からなる信頼性評価試験、良品・不良 解析、試験素材切断と切断面の研磨加工、試験機製造販売等を行っています。不良の真因を見つけ出すための再現実験を行い、顧客の技術課題を根本から解決します。 関連会社であるSGSクオルテック株式会社の営業力と当社の技術力を融合した技術営業体制を構築し、受託試験を通じて蓄積した技術・ノウハウを活かしたパワー半導体の信頼性評価装置の開発販売しています。 電気自動車の基幹部品であるインバータの中のパワー半導体の信頼性評価試験や故障解析に取組んでいます。

微細加工事業

ビルドアップ基板やフレキシブルプリント基板(薄く柔らかい屈曲可能な基板)等に対する 試作・量産レーザ加工を行っています。スマートフォンから医療機器まで、ジャンルを問わない幅広い対応力で顧客のニーズに対応し、顧客の要望に応えるために必要な設備を揃えることで電子部品業界の技術的なニーズに応える体制を整えており、アウトソーシングする基板メーカーに対して、ビッグロットの量産加工から新材料のレーザ加工性評価や極短納期の試作品加工まで、多様な依頼に柔軟に対応できます。

その他事業

遺伝子検査を通じた犬・猫遺伝子疾患の原因遺伝子変異の検出サービスやバイオ医療関連製品(包装材料、シリンジ等)の受託検査を行うバイオ事業、各種コンサルティングのゼロイノベーション事業、表面処理技術事業も展開しています。

 

財務状況

売上高、利益などの業績推移を目論見書からアップロードしました。

会社業績(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 売上 営利 経常 純利 EPS ROE ROA 営利率 原価率 販管費率
Dec-17 32.8億 343百万 264百万 162.51 6.02
Dec-18 32.6億 -54百万 50百万 27.76 1.2
Dec-19 29.9億 -117百万 0.19百万 0.09 0
Dec-20 29.2億 26百万 -216百万 -102.95 赤字
Jun-21 14.8億 58百万 55百万 64百万 30.42 3.33 1.94 3.9 76.23 19.87
Jun-22 31.6億 348百万 340百万 327百万 155.94 14.57 9.64 11.03 72.22 16.74

 

財務状況(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 総資産 純資産 株主資本 自己資本比率 利益剰余金 有利子負債 有利子負債比率 BPS
Dec-17 43.9億 12.7億 28.9
Dec-18 41.8億 16.1億 38.4
Dec-19 42.7億 21.1億 49.4
Dec-20 36億 18.5億 51.5
Jun-21 32.8億 19.2億 19.2億 58.4 10.5億 519百万 27.07 913.69
Jun-22 34億 22.5億 22.5億 66.1 13.7億 304百万 13.54 1069.97

 

IPO情報

新規上場(IPO)に向けて、幾つかの重要な情報をまとめました。

基本情報

業種:サービス業

銘柄コード:9165

上場区分:東証グロース

 

IPO日程

ご利用の証券会社によって、多少のズレが生じますので、ご注意ください。

IPO主要日程 横スクロールできます

ブックビルディング期間 2023年7月11日〜7月18日
ブックビルディング抽選日 2023年7月19日
購入申込期間 2023年7月20日〜7月24日
上場日 2023年7月28日

 

IPO情報

IPOに関する公募総数や公募価格(予定)をまとめます。

IPO情報 横スクロールできます

公募株式総数 1,205,000株
売出株式比率 79.3%
O.A分 180,700株
想定価格 2,540円
仮条件価格 2,400円(94%)〜2,540円(100%)
公募価格 2,540円(予定)
吸収金額 35.20億円(予定)
ロックアップ 主に90日間
主幹事 野村證券

 

今後の展望や懸念事項

今後の我が国経済は、資源価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻による不安定な国際情勢のなかで、 当面は先行き不透明な事業環境が継続するものと見込まれますが、このような環境の中、株式会社クオルテックは、顧客の多種多様なニーズに対応できる技術陣の強みを活かし、また、高度な分析に対して性能の良い装置や設備の設備投資を行い、技術やノウハウの蓄積を継続しています。

また、以下の事項を対処すべき課題として取組みを進めていきます。

自動車業界以外の柱となる業界の開拓

主要事業である信頼性評価事業においては、自動車業界の得意先向けの売上割合が高い状況となっており、今後は、微細加工事業においてヘルスケア分野への進出や新規事業として取組んでいるバイオ事業の規模拡大を図ること等により自動車業界以外の柱となる業界を開拓していきます。

設備の増強

自動車業界におけるティア2(ティア1に部品を供給する企業)やティア3(ティア2に部品を供給する企業)メーカーといった部品メーカーからの受託試験のみならず、今後ティア1(完成車メーカー に部品を供給する企業)からのインバータやモーター等ユニット単位の受託試験のニーズに対応するため、大型冷熱、大型振動、大型X線CT等の導入を進めていきます。

技術力の向上

顧客の様々なニーズに応えるためには今後も技術力の向上が必要であると考えており、規格に沿った信頼性評価試験のみならず、パワーサイクル試験、アバランシェ試験、メーカー独自規格の試験 に取組むことで高難度な試験能力を蓄積することで技術力の向上を図ります。

新規事業の醸成

AIを活用したクラック、ボイドの観察等の解析技術をX線等、分析装置メーカーと協力して一体販売することでAIによる解析技術を事業化することを目指していきます。現在、ボイド解析アプリの提案を顧客数社へ行い、解析性能の向上やユーザーごとのカスタマイズ対応など、事業化に向けた取組みを進めております。

優秀な技術者の採用及び育成

優秀な技術者の採用と育成が事業成長に必要不可欠であると認識しており、近年、 技術者の採用市場は獲得競争が激化しており、今後も人材確保には厳しい状況が続くものと予想されますが、労働環境の改善や紹介会社との連携強化を行う等引き続き積極的な採用活動を行っています。また、採用後も高いモチベーションを持って安心して働くことができる労働環境の改善、人事制度の充実、人材育成のための教育・研修制度の整備を進めていきます。

独自評価及びスコア

これまでの投資経験を活かしたデータ分析で、独自評価及びスコアを付けています。

独自評価スコア:D8

※独自評価スコアはD4(低評価)〜S20(高評価)まで存在します。

独自の評価指標

2017年1月から2023年5月までの過去6.5年間にIPO新規上場(IPO)した企業は、トータル615社でした。

それらの企業データから、以下の9の項目について、ホームページや目論見書(IPO時に発行される報告書)を調査して、上場前に初値上昇率や損失リスク度を分析しています。

  1. 業種(最近、情報通信業の初値上昇率は比較的高い傾向)
  2. 業績(売上高や利益率が健全に成長しているか)
  3. 上場市場(現在、東証プライムに上場する大型株は、初値が上昇しづらい傾向)
  4. 主幹事(IPOを管理する証券会社で多少の影響がある)
  5. 公開株数(少ない方がプラチナチケットになり易いが、当選しづらくなる)
  6. 売り出株式比率(新規発行分と既存分の比率で、低い方が上がり易い)
  7. ロックアップ(大株主が上場日から一定期間、売却できない期間のことで、長めの設定が良い)
  8. 株単価(安い方が、初値上昇率は高くなる傾向)
  9. 同日上場企業数(同日に複数社がIPOする場合は資産が分散して上がりづらい傾向)

これらの9項目の分析結果から、初値上昇があまり期待できそうにない企業については、予めBB申込を辞退して、マイナス=損失リスクを軽減しています。

初値上昇率の予想

2017年1月から2023年5月までの過去6.5年間にIPO新規上場(IPO)した企業は615社で、評価スコア「D8」の企業は34社ありました。

それら企業における初値上昇率(=初値/公募価格)は以下の通りです。

過去データを基に算出した初値上昇率 横スクロールできます

平均値 112%(1.12倍)
最大値 198%(1.98倍)
最小値 63%(公募割れ)
中央値 105%(1.05倍)

 

過去6.5年間で公募割れした企業は13ありましたので、初値の公募割れリスクは38%です。

平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値=平均値に対して、中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。平均値の場合は他の値と比べて極端に大きい(または小さい)値があることによって、影響を受けてしまいますが、中央値の場合は、真ん中の値ですので、そのような影響は受けづらいのが特徴です

 

管理人のBBスタンス

過去のデータを分析した独自評価スコアに応じて、管理人のブックビルディング(BB)のスタンスを決めています。

若干の公募割れリスクがあり、また同日に別のIPO上場と重なっているため、大幅な初値上昇の期待は薄いので、「やや控えめに各証券口座からBB申込予定」です。

主幹事の野村證券が狙い目です。

最後に

不安定な世界情勢や世界各国の利上げ、さらには米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの破綻など、株式にとってはマイナス要因が多い状況なので、日本国内のIPO新規上場企業への株式投資に対しても、今まで以上に慎重に検討する必要が出てきています。

今回の記事が、あなたの投資判断に有益になれば幸いです。

最後に、あくまで営利を伴わない個人的な自己分析なので、最終的な投資判断は自己責任でお願い致します。