IPO

【JRC】新規上場企業データ分析 公募割れリスクは38%

株式会社JRCは、お客様の現場を全体最適化するソリューションパートナーとして、「コンベヤ部品事業」と「ロボットSI事業」を運営する企業です。

東京証券取引所(東証)または地方証券取引所へ新規上場予定の企業について、独自の視点でデータ分析しています。

企業概要

会社名

株式会社JRC

創立年

1961年4月

本社所在地

〒550-0011 大阪市西区阿波座2-1-1 大阪本町西第一ビルディング6F

事業内容

  • コンベヤ部品の設計・製造・販売
  • ロボットを活用した自動設備などの設計・製造・販売

 

事業説明

株式会社JRCは、当社及び100%子会社である、JRC C&M株式会社、株式会社大成、吉艾希商事(瀋陽)貿易有限公司により運営されております。

「世の中の「不」をなくす」をビジョンに掲げ、主に屋外用ベルトコンベヤ部品の製造・販売、コンベヤ課題解決ソリューションを提供する「コンベヤ部品事業」と、製造業における人手不足という社会課題に対し、ロボットによる自動化技術で解決・支援する「ロボットSI事業」の両輪で、時代が直面する課題を解決し、社会発展の基盤づくりに貢献するソリューションを創造しています。

なお、2023年2月期における連結売上高及び構成比は、コンベヤ事業が84億57百万円(94.4%)、ロボットSI事業が5億3百万円(5.6%)となっております。

コンベヤ事業

コンベヤ事業では、各種産業の生産・物流工程における連続搬送の合理化・効率化に必要不可欠な「屋外用ベルトコンベヤ」の部品(アイドラ、ローラ、プーリ、ベルトクリーナー等のコンベヤ周辺機器)の設計、製造及び販売を行っています。各種コンベヤは、駆動伝達方法の違いによって、ベルトコンベヤ、チェーンコンベヤ、ローラコンベヤなどに分類されます。さらにベルトコンベヤは、屋内・屋外用に分類されますが、株式会社JRCの主たる事業領域は屋外用のベルトコンベヤ用の部品です。屋外用のベルトコンベヤは大規模かつ劣悪な環境で使用されることが特徴であり、主に製鉄所、建設・工事現場、セメント工場、鉱山、発電所等における長距離・重量物搬送といった場面で使用されています。株式会社JRCではでは、JISローラのような標準品から特注品まで顧客のニーズに応じた様々な製品を提供しています。

ロボットSI事業

ロボットSI事業は、2018年に「ALFIS」ブランドで本格展開を開始した新規事業です。自社工場の自動化などを通じて培った自動化ノウハウ、コンベヤ事業で培ったメーカー目線でのソリューション提案能力を活用し、少子高齢化社会における労働力不足という社会課題を産業用ロボットや協働ロボットの導入・利活用によって解決することを目標としています。産業用ロボットは購入・設置すれば即製造ラインで仕事ができるというものではなく、現場でロボットの能力を発揮させるためには、ロボットに作業をプログラミングするティーチングはもちろん、場合によってはロボットに合わせた製造ライン全体の再デザインや、細やかな現場でのすり合わせ、さらにはロボットを扱う人材の教育まで、様々な導入作業が必要となります。ロボットSIer(ロボットシステムインテグレータ)は、ロボット導入を検討する顧客の現場課題を分析し、最適なロボットシステムを構築するために、ロボットをはじめとする様々な周辺設備やビジョンセンサ(カメラ)等の関連装置を選別し、前後工程の見直しも含めて、全体をシステムとして統合するエキスパートです。

 

財務状況

売上高、利益などの業績推移を目論見書からアップロードしました。

会社業績(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 売上 営利 経常 純利 包括 EPS ROE ROA 営利率 原価率 販管費率
Feb-19 61.3億 5.79億 -12.4億 -80.31 赤字
Feb-20 66億 5.21億 0.81億 6.42 0.93
Feb-21 63.2億 3.41億 1.75億 13.83
Feb-22 80.9億 8.57億 8.45億 5.45億 542百万 43.2 20.02 6.11 10.6 67.33 22.07
Feb-23 89.6億 12.5億 12.7億 8.31億 825百万 65.83 24.09 8.34 13.98 66.26 19.76

 

財務状況(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 総資産 純資産 株主資本 自己資本比率 利益剰余金 有利子負債 有利子負債比率 BPS
Feb-19 81.3億 29.4億 36.1
Feb-20 87.6億 20.1億 23
Feb-21 22.8億
Feb-22 89.3億 27.2億 27億 30.5 27.6億 41.5億 152.24 215.85
Feb-23 99.6億 34.5億 34.3億 34.6 34.9億 37.2億 107.9 273.28

 

IPO情報

新規上場(IPO)に向けて、幾つかの重要な情報をまとめました。

基本情報

業種:機械・機器業

銘柄コード:6224

上場区分:東証グロース

 

IPO日程

ご利用の証券会社によって、多少のズレが生じますので、ご注意ください。

IPO主要日程 横スクロールできます

ブックビルディング期間 2023年7月25日〜7月31日
ブックビルディング抽選日 2023年8月1日
購入申込期間 2023年8月2日〜8月4日
上場日 2023年8月9日

 

IPO情報

IPOに関する公募総数や公募価格(予定)をまとめます。

IPO情報 横スクロールできます

公募株式総数 6,165,300株
売出株式比率 99.2%
O.A分 924,700株
想定価格 1,005円
仮条件価格 1,000円(100%)〜1,110円(110%)
公募価格 1,110円(予定)
吸収金額 78.70億円(予定)
ロックアップ 主に180日間
主幹事 SMBC日興証券&みずほ証券

 

今後の展望や懸念事項

マーケット全体としては、日本の製鉄業界の縮小傾向や石炭火力発電所の新設が見込めないなど、社会全体の成熟に伴い、かつてのような大規模開発の数は減少しています。当面は、気候変動による自然災害への対応に向けた、河川の堤防工事、防災工事等の強靭化に向けた需要は継続すると見込まれますが、かつてコンベヤ業界の成長を支えた、空港や港湾整備等の大規模なインフラ整備に伴う需要機会は、将来的には限られるものと考えられます。株式会社JRCが得意とする屋外ベルトコンベヤは、重量物の長距離連続輸送といった場面において歴史と豊富な実績を有する安定性・効率性に優れた搬送システムであるため、直ちに国内からコンベヤが撤去され、安定的な収益基盤であるコンベヤ部品の交換需要が失われることは想定されませんが、新設の機会が限られる以上、単純なコンベヤ部品の需要については国内市場規模は徐々に縮小に向かいつつあるものと見られます。

製造現場に目を移すと、労働力不足や昨今の「働き方改革」に象徴される労働者の意識の変化を受け、より生産性が求められる時代となり、コンベヤも例外ではなく、かかる時代の変化に応じた更なる生産性向上が求められています。その一方で、コンベヤのユーザーでは、運用スタッフの世代交代等により、コンベヤに関する知識・経験が失われつつあり、コンベヤの生産性を向上させる方法がわからないばかりか、潜在的な生産性向上の余地そのものが見落とされているといった状況が散見されます。

そのような状況の中、株式会社JRCは創業以来培ってきた専門性を活かし、コンベヤ部品の更なる高品質・高機能化、蛇行防止機能やメンテナンス性を高める商材の投入を含め、顧客に対してコンベヤの生産性をトータルに改善するソリューション提案を行うなど、営業・サービス面の拡充に取り組んできており、当該ソリューション活動は着実に効果を上げており、コンベヤマーケットには単なる部品需要にとどまらない新たなニーズの創出機会が十分にあるものと考えられています。また、ソリューションを通じた高付加価値製品の市場への投入により当該高付加価値製品のリプレイス需要が生まれることから、リプレイスのマーケットにも成長の余地があるものと考えられています。

今後は、マーケットのプレイヤーである代理店等を巻き込みつつ、さらなるソリューション活動の拡大とスピードアップに重点的に取り組み、付加価値の高いサービスの提供や高機能な新商品へのリプレイスを推進する事で、コンベヤマーケットそのものを成長させることを目指しています。また、製造面においては、材料費が値上がりする中、さらなる生産効率の向上が求められる環境となっており、コンベヤ部品には特注品も多いため、原材料費や加工費に対して一定の利益を乗せることについて比較的理 解を得やすく、売上規模、品質、提案力等によりコスト上昇の販売価格への転嫁についても一定の交渉力を持って臨んでおり、今後も利益を確保し続けるためには、製造DX化、将来的な無人化も見据えた更なる製造自動化等による生産効率の向上や、サプライチェーンの強化に向けた取り組み等が必須な状況にあるものと考えられています。

 

独自評価及びスコア

これまでの投資経験を活かしたデータ分析で、独自評価及びスコアを付けています。

独自評価スコア:D8

※独自評価スコアはD4(低評価)〜S20(高評価)まで存在します。

独自の評価指標

2017年1月から2023年5月までの過去6.5年間にIPO新規上場(IPO)した企業は、トータル615社でした。

それらの企業データから、以下の9の項目について、ホームページや目論見書(IPO時に発行される報告書)を調査して、上場前に初値上昇率や損失リスク度を分析しています。

  1. 業種(最近、情報通信業の初値上昇率は比較的高い傾向)
  2. 業績(売上高や利益率が健全に成長しているか)
  3. 上場市場(現在、東証プライムに上場する大型株は、初値が上昇しづらい傾向)
  4. 主幹事(IPOを管理する証券会社で多少の影響がある)
  5. 公開株数(少ない方がプラチナチケットになり易いが、当選しづらくなる)
  6. 売り出株式比率(新規発行分と既存分の比率で、低い方が上がり易い)
  7. ロックアップ(大株主が上場日から一定期間、売却できない期間のことで、長めの設定が良い)
  8. 株単価(安い方が、初値上昇率は高くなる傾向)
  9. 同日上場企業数(同日に複数社がIPOする場合は資産が分散して上がりづらい傾向)

これらの9項目の分析結果から、初値上昇があまり期待できそうにない企業については、予めBB申込を辞退して、マイナス=損失リスクを軽減しています。

初値上昇率の予想

2017年1月から2023年5月までの過去6.5年間にIPO新規上場(IPO)した企業は615社で、評価スコア「D8」の企業は34社ありました。

それら企業における初値上昇率(=初値/公募価格)は以下の通りです。

過去データを基に算出した初値上昇率 横スクロールできます

平均値 112%(1.12倍)
最大値 198%(1.98倍)
最小値 63%(公募割れ)
中央値 105%(1.05倍)

 

過去6.5年間で公募割れした企業は13ありましたので、初値の公募割れリスクは38%です。

平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値=平均値に対して、中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。平均値の場合は他の値と比べて極端に大きい(または小さい)値があることによって、影響を受けてしまいますが、中央値の場合は、真ん中の値ですので、そのような影響は受けづらいのが特徴です

 

管理人のBBスタンス

過去のデータを分析した独自評価スコアに応じて、管理人のブックビルディング(BB)のスタンスを決めています。

若干の公募割れリスクがあり、大幅な初値上昇の期待は薄いので、「やや控えめに各証券口座からBB申込予定」です。

公開株数が多いので当選しやすい案件ですが、特に主幹事のSMBC日興証券とみずほ証券が狙い目です。

最後に

不安定な世界情勢や世界各国の利上げ、さらには米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの破綻など、株式にとってはマイナス要因が多い状況なので、日本国内のIPO新規上場企業への株式投資に対しても、今まで以上に慎重に検討する必要が出てきています。

今回の記事が、あなたの投資判断に有益になれば幸いです。

最後に、あくまで営利を伴わない個人的な自己分析なので、最終的な投資判断は自己責任でお願い致します。