IPO

【ispace】新規上場企業データ分析

東京証券取引所(東証)または地方証券取引所へ新規上場予定の企業について、独自の視点でデータ分析しています。

企業概要

会社名

株式会社ispace

創立年

2010年9月

本社所在地

〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3丁目42-3 住友不動産浜町ビル3F

事業内容

宇宙資源を活用し、地球と月をひとつのエコシステムとする持続的な世界の構築に向けて、以下の事業を運営している

  • 宇宙コンテンツによる企業マーケティング支援
  • 月面データの調査支援および販売
  • 月周回および月面への高頻度輸送サービス
  • 月周回および月面へのペイロード開発支援
  • 宇宙資源開発に向けたR&D

 

事業説明

ispace社は、自社で開発中の月着陸船(ランダー)および月面探査車(ローバー)を用いて、以下の3つの事業をビジネスモデルとしています

顧客荷物(ペイロード)サービス

月に輸送する物資である顧客荷物(以下「ペイロード」)をispaceの月着陸船(ランダー)や月面探査車(ローバー)に搭載し、月まで輸送するサービスを提供。

本サービスには、ロケットの打上げから月面へのペイロードの輸送は勿論のこと、打上げの約1~2年前を目途に開始される顧客のペイロードをランダー及びローバーに搭載するための技術的なアドバイスと調整、更には月面到着後の実験や関連するデータ通信等に係るサービスの提供までが含まれます。

基本的に1機のランダーによる1回の月着陸及び月面探査のプロジェクトを「1ミッション」と定義し、ミッション単位で事業を運営しており、民間初の月面着陸ミッションとなる2022年のミッション1及び、続く月面探査ミッションとなる2024年(予定)のミッション2を、技術実証ミッションとして位置付け、これら2ミッションを総括して「HAKUTO-R」プログラムと呼称している。

データサービス

現在において売上計上の開始には至っておりませんが、将来的にデータサービスを主要サービスの一つとして提供することを計画している。

顧客自身がペイロードを準備の上、ispaceに輸送を委託し、月面や月周回軌道から地球へ試験データをフィードバックするペイロードサービスを活用した直接的なデータ収集に加えて、顧客がispaceのペイロードを利用してデータ収集を行い、その結果をデータとして地球へ送り返し、解析の上、次なるR&Dへ活用したいというニーズに対応する予定。

パートナーシップサービス

ispaceの活動を、コンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマークの露出、データ利用権等をパッケージとして販売し、技術開発や事業開発で協業を行うパートナーシップ・プログラムを提供する。

ペイロードサービス及びデータサービスからの収入に対して、パートナーシップサービスからの収益の割合は今後相対的に減少する見込みであるものの、ミッション3以降も新たなプログラムを策定の上、継続して計上する予定。

 

財務状況

売上高、利益などの業績推移を目論見書からアップロードしました。

会社業績(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 売上 営利 経常 純利 包括 EPS ROE ROA 営利率 原価率 販管費率
Aug-17 344百万 -3.9億 -4.01億 -20.06 赤字
Mar-18 149百万 -7.1億 -7.12億 -15.83 赤字
Mar-19 304百万 -12.2億 -12.9億 -28.7 赤字
Mar-20 216百万 -16.1億 -16.1億 -35.9
Mar-21 507百万 -26.2億 -26.1億 -26.1億 -26.2億 -53.08 赤字 赤字 -517.95 33.62 584.33
Mar-22 674百万 -40.6億 -40.4億 -40.6億 -41.1億 -75.32 赤字 赤字 -601.75 50.37 651.39

 

財務状況(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 総資産 純資産 株主資本 自己資本比率 利益剰余金 有利子負債 有利子負債比率 BPS
Aug-17 4.27億 -5.41億 -126.6
Mar-18 98.2億 93億 94.7
Mar-19 84.3億 80.1億 95.1
Mar-20 64.2億
Mar-21 85億 73.3億 73.3億 86.2 -26億 2.3億 3.14 148.72
Mar-22 125億 88.3億 88.7億 70.7 -39.8億 21.6億 24.51 163.74

 

IPO情報

新規上場(IPO)に向けて、幾つかの重要な情報をまとめました。

基本情報

業種:サービス業

銘柄コード:9348

上場区分:東証グロース

 

IPO日程

ご利用の証券会社によって、多少のズレが生じますので、ご注意ください。

IPO主要日程 横スクロールできます

ブックビルディング期間 2023年3月28日〜3月31日
ブックビルディング抽選日 2023年4月3日
購入申込期間 2023年4月4日〜4月6日
上場日 2023年4月12日

 

IPO情報

IPOに関する公募総数や公募価格(予定)をまとめます。

IPO情報 横スクロールできます

公募株式総数 24,699,700株
売出株式比率 0.0%
O.A分 1,242,900株
想定価格 244円
仮条件価格 234円(96%)〜254円(106%)
公募価格 254円(予定)
吸収金額 65.89億円(予定)
ロックアップ 180日間
主幹事 SMBC日興証券

 

今後の展望や懸念事項

宇宙ビジネス全体としては様々な事業領域が存在します。

宇宙市場全体の成長可能性については、2040年代にはその市場規模はグローバルで1兆ドル以上に成長するとの予測があります。

その中でも、ispaceがターゲットとする事業領域は、1,502億ドルの獲得可能な最大市場規模を見込む月面輸送及び207億ドルの最大市場規模を見込む月データに係る2つのサービスを手掛けています。

将来的に技術が一定程度確立され、安定的な月面輸送が可能となると想定されるミッション4以降、平均して年2回から3回のミッションを実施することを計画しておりますが、現時点においてビジネスモデル及び宇宙事業は草創期にあるため、ビジネスモデルを評価することには困難な状況です。

ispace社における初ミッションは2022年12月11日に打上げが行われ、現在進行中ですが、当社が月面着陸又は月周回軌道への顧客の荷物の輸送に成功した実績はなく、また、民間企業が月面着陸に成功した事例もありません。

市場として草創期にあること、産業として成長・進化し続けるという特性を持っていることや様々なリスクや不確実性が存在していることなど、ビジネスとして堅実な利益を上げるタイミングは少し先になるかもしれませんので、慎重に見極める必要がありそうです。(個人的には宇宙産業は期待しています)


独自評価及びスコア

これまでの投資経験を活かしたデータ分析で、独自評価及びスコアを付けています。

独自評価スコア:C10

※独自評価スコアはD4(低評価)〜S20(高評価)まで存在します。

独自の評価指標

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は、トータル591社でした。

それらの企業データから、以下の9の項目について、ホームページや目論見書(IPO時に発行される報告書)を調査して、上場前に初値上昇率や損失リスク度を分析しています。

  1. 業種(最近、情報通信業の初値上昇率は比較的高い傾向)
  2. 業績(売上高や利益率が健全に成長しているか)
  3. 上場市場(現在、東証プライムに上場する大型株は、初値が上昇しづらい傾向)
  4. 主幹事(IPOを管理する証券会社で多少の影響がある)
  5. 公開株数(少ない方がプラチナチケットになり易いが、当選しづらくなる)
  6. 売り出株式比率(新規発行分と既存分の比率で、低い方が上がり易い)
  7. ロックアップ(大株主が上場日から一定期間、売却できない期間のことで、長めの設定が良い)
  8. 株単価(安い方が、初値上昇率は高くなる傾向)
  9. 同日上場企業数(同日に複数社がIPOする場合は資産が分散して上がりづらい傾向)

これらの9項目の分析結果から、初値上昇があまり期待できそうにない企業については、予めBB申込を辞退して、マイナス=損失リスクを軽減しています。

初値上昇率の予想

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は591社で、評価スコア「C10」の企業は76社ありました。

それら企業における初値上昇率(=初値/公募価格)は以下の通りです。

過去データを基に算出した初値上昇率 横スクロールできます

平均値 142%(1.42倍)
最大値 305%(3.05倍)
最小値 83%(公募割れ)
中央値 139%(1.39倍)

公募割れした企業は7社あり、約9%の企業が初値で公募価格を下回ったことになります。

平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値=平均値に対して、中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。平均値の場合は他の値と比べて極端に大きい(または小さい)値があることによって、影響を受けてしまいますが、中央値の場合は、真ん中の値ですので、そのような影響は受けづらいのが特徴です

 

管理人のBBスタンス

過去のデータを分析した独自評価スコアに応じて、管理人のブックビルディング(BB)のスタンスを決めています。

過去データの分析結果から、ispace社の初値は公募割れ(初値が公募価格を下回ること)のリスクが多少ありますが、公募価格が安価で購入しやすいため、「すべての所有口座からBB申込予定」です。

公開株数はおよそ2,600万枚(O.A分含む)も発行されますので、ブックビルディングにも当選しやすい銘柄となっています。

なお、主幹事のSMBC日興証券が狙い目です。

最後に

不安定な世界情勢や世界各国の利上げ、さらには米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの破綻など、株式にとってはマイナス要因が多い状況なので、日本国内のIPO新規上場企業への株式投資に対しても、今まで以上に慎重に検討する必要が出てきています。

今回の記事が、あなたの投資判断に有益になれば幸いです。

最後に、あくまで営利を伴わない個人的な自己分析なので、最終的な投資判断は自己責任でお願い致します。