IPO

【エコム】新規上場企業データ分析

東京証券取引所(東証)または地方証券取引所へ新規上場予定の企業について、独自の視点でデータ分析しています。

企業概要

会社名

株式会社 ECOM (エコム)

創立年

1985年8月17日

本社所在地

〒434-0041 浜松市浜北区平口5277-1

事業内容

  • 工業炉の設計から稼働後の保守サービスまで全工程を一貫して行う

 

事業説明

工業炉の設計から稼働後の保守サービスまで全工程を一貫して行う「熱技術総合エンジニアリング企業」で、事業セグメントとしては、工業炉の開発・設計・製造を行う「産業システム事業」と既存の工業炉の点検、監視、改造工事を行う「保守サービス事業」の2セグメントで構成されています。

設計のみ、製造のみを請け負うメーカーが多い中、川上の設計から川下の保守までの一連の工程すべてをワンストップで行えることがECOM社の強みです。

産業システム事業

「熱処理」を行う工業炉をオーダーメイドで設計、製造しています。

工業炉には、金属を溶解する 「溶解炉」、塗装を乾燥する「乾燥炉」、樹脂を硬化する「硬化炉」など、様々な種類があり、それらの工業炉を通じて、アルミ・ガラス・炭素繊維などの素材から、車やスマートフォンの部品などが作り出されています。

産業システム事業における受注の78.1%((2020年~2022年の直近3ヵ年実績)は自動車業界となっており、自動車はエンジン、ガラス、シートなど、その生産の多くは「加熱する工程」が存在し、アルミ溶解、塗装乾燥、部品の強度を高めるためのアニール処理など、様々な熱処理が必要となっているのが現状です。

保守サービス事業

保守サービス事業がECOM社の祖業のビジネスで、工具箱を片手に工業炉のメンテナンスを始めたのが始まりです。そこで得たノウハウをもとに先の産業システム事業を立ち上げました。

既に全国で539社(2022年12月31日現在)の工業炉のメンテナンスを請け負っており、追加で他社製の工業炉のメンテナンスも請負い、さらには、工業炉にセンサーを設置し、クラウド上に収集した各種燃焼データを遠隔監視することで、設備の不具合や故障を事前に予知するIoTメンテナンスサービス Miterune(ミテルネ)も導入し初め、引き続きビジネスを拡大しています。

財務状況

売上高、利益などの業績推移を目論見書からアップロードしました。

会社業績(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 売上 営利 経常 純利 EPS ROE ROA 営利率 原価率 販管費率
Jul-18 16.1億 84百万 180百万 178.09 4.6
Jul-19 25.1億 402百万 280百万 275.96 7.86
Jul-20 16億 161百万 141百万 139.59 3.98
Jul-21 17.6億 130百万 136百万 149百万 147.38 5.96 4.73 7.39 71.29 21.33
Jul-22 15億 98百万 106百万 101百万 99.66 3.93 2.49 6.51 69.39 24.1

 

財務状況(IR BANKより) 横スクロールできます

年度 総資産 純資産 株主資本 自己資本比率 利益剰余金 有利子負債 有利子負債比率 BPS
Jul-18 39.3億 23.2億 59
Jul-19 35.6億 25.9億 72.7
Jul-20 35.6億 25.7億 72.3
Jul-21 31.6億 25億 25億 79.2 27.2億 0 0 2471.11
Jul-22 40.6億 25.7億 25.7億 63.3 28.1億 279百万 10.84 2536.41

 

IPO情報

新規上場(IPO)に向けて、幾つかの重要な情報をまとめました。

基本情報

業種:機械・機器業

銘柄コード:6225

上場区分:名証メイン

 

IPO日程

ご利用の証券会社によって、多少のズレが生じますので、ご注意ください。

  • ブックビルディング期間:2023年3月15日〜3月22日
  • ブックビルディング抽選日:2023年3月23日
  • 購入申込期間:2023年3月24日〜3月28日
  • 上場日:2023年3月31日

 

IPO情報

IPOに関する公募総数や公募価格(予定)をまとめます。

  • 公募株式総数:140,000株
  • 売出株式比率:85.7%
  • O.A分:21,000株
  • 想定価格:¥1,680
  • 仮条件価格:¥1,600 (95%) 〜 ¥1,680 (100%)
  • 公募価格:¥1,680(予定)
  • 吸収金額:2.70億円(予定)
  • ロックアップ:主要株主に180日間のロックアップあり
  • 主幹事:東海東京証券

 

今後の展望や懸念事項

地球規模で温暖化が進み、環境問題は深刻な状況に直面しています。日本を含め世界各国は 「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」のグリーン成長戦略を掲げています。

環境省から発表されたデータによると、二酸化炭素(CO2)の排出量の約34%は「工場等の産業部門」 からの排出です。さらにその産業部門から排出されるCO2の約40%は「工業炉」からの排出と言われています。これは日本全体のCO2排出量の約13.6%に相当しており、工業炉メーカーであるECOM社は、工業炉の省エネルギー化を事業活動の中心に位置付けることに伴い、持続可能な成長が期待されています。

独自評価及びスコア

独自評価スコア

D6

※独自評価スコアはD4(低評価)〜S20(高評価)まで存在します。

独自の評価指標

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は、トータル591社でした。

それらの企業データから、以下の9の項目について、ホームページや目論見書(IPO時に発行される報告書)を調査して、上場前に初値上昇率や損失リスク度を分析しています。

  1. 業種(最近、情報通信業の初値上昇率は比較的高い傾向)
  2. 業績(売上高や利益率が健全に成長しているか)
  3. 上場市場(現在、東証プライムに上場する大型株は、初値が上昇しづらい傾向)
  4. 主幹事(IPOを管理する証券会社で多少の影響がある)
  5. 公開株数(少ない方がプラチナチケットになり易いが、当選しづらくなる)
  6. 売り出株式比率(新規発行分と既存分の比率で、低い方が上がり易い)
  7. ロックアップ(大株主が上場日から一定期間、売却できない期間のことで、長めの設定が良い)
  8. 株単価(安い方が、初値上昇率は高くなる傾向)
  9. 同日上場企業数(同日に複数社がIPOする場合は資産が分散して上がりづらい傾向)

これらの9項目の分析結果から、初値上昇があまり期待できそうにない企業については、予めBB申込を辞退して、マイナス=損失リスクを軽減しています。

初値上昇率の予想

過去6年間にIPO新規上場(IPO)した企業は591社で、評価スコア「D6」の企業は33社ありました。

その33社の初値上昇率(=初値/公募価格)は以下の通りです。

  • 平均値:103%
  • 最大値:165%
  • 最小値:79%(公募割れ)
  • 中央値:101%

 

平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値=平均値に対して、中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。平均値の場合は他の値と比べて極端に大きい(または小さい)値があることによって、影響を受けてしまいますが、中央値の場合は、真ん中の値ですので、そのような影響は受けづらいのが特徴です

 

管理人のBBスタンス

過去のデータを分析した独自評価スコアに応じて、管理人のブックビルディング(BB)のスタンスを決めています。

ECOM社の初値は公募割れ(初値が公募価格を下回ること)のリスクがあるため、「SBI証券口座のみIPOチャレンジポイントを獲得するために100株分のみBB申込、その他のすべての所有口座はBB辞退する予定」です。

人気を集めそうなFusic社が同日上場する予定なのも、初値が上がりづらい不利な状況だと推測しています。

最後に

不安定な世界情勢や世界各国の利上げ、さらには米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの破綻など、株式にとってはマイナス要因が多い状況なので、日本国内のIPO新規上場企業への株式投資に対しても、今まで以上に慎重に検討する必要が出てきています。

今回の記事が、あなたの投資判断に有益になれば幸いです。

最後に、あくまで営利を伴わない個人的な自己分析なので、最終的な投資判断は自己責任でお願い致します。